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東京地方裁判所 昭和63年(行ウ)193号 判決 1990年7月30日

原告 ニューヨークユニバーシィティ

被告 特許庁長官

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が、昭和六一年七月三一日、原告提出の昭和六一年三月二四日付「特許法第一八四条の五第一項の規定による書面」と題する書面(同書面添付の特許法第一八四条の四第一項に規定する明細書、請求の範囲及び図面の日本語による翻訳文を含む。)についてした不受理処分を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求の原因

1  本件処分の経緯等について

(一) 原告は、一九八五年七月二三日、米国特許商標庁(以下「受理官庁」という。)に対し、特許協力条約(以下単に「条約」という。)に基づき、優先日を一九八四年七月二三日とする優先権の主張を伴う国際出願(以下「本件国際出願」という。)をし、これに対して、受理官庁は、右一九八五年七月二三日を国際出願日と認めた。

原告は、本件国際出願に係る右国際出願日における願書(以下「当初願書」という。)の「国の指定、ヨーロッパ特許の選択、特定の種類の保護又は取扱いの選択」欄(以下「指定国欄」という。)には、オーストラリア、デンマーク、朝鮮民主主義人民共和国及び欧州特許条約の締結国が指定国であることを表示するチェックをした。

(二) 原告は、一九八五年九月一三日、受理官庁に対し、右(一)の指定国のうち朝鮮民主主義人民共和国の表示は日本国の表示の明白な誤りであるから、日本国の表示に訂正(以下「本件訂正」という。)する旨の請求を行い、これに対して、受理官庁は、同年一〇月三一日、右訂正を許可した(以下「本件訂正の許可」という。)。

(三) 国際事務局は、一九八六年二月一三日、本件国際出願の国際公開を行った。

(四) 受理官庁は、同月二七日、国際事務局に対し、本件訂正の許可の通知を発送し、同通知は、同年三月四日、国際事務局に到達した。

(五) 原告は、昭和六一年三月二四日、被告に対し、本件国際出願に基づき、特許法一八四条の五第一項の規定による書面(同法一八四条の四第一項に規定する明細書、請求の範囲及び図面の日本語による翻訳文を含む。)(以下「本件書面」という。)を提出した。

(六) 国際事務局は、一九八六年三月二七日、本件国際出願について、指定国として日本国を含んだ願書を「訂正版」として国際公開した。

(七) 被告は、昭和六一年七月三一日、本件書面について、「客体なし。(注)国際出願日における願書の指定国欄に日本が指定されていない。」との理由で不受理処分(以下「本件処分」という。)をした。

(八) 原告は、昭和六一年一〇月六日、被告に対し、本件書面のうち、特許法一八四条の四第一項に規定する明細書、請求の範囲及び図面の日本語による翻訳文を除いた部分に係る本件処分について行政不服審査法による異議申立てをしたが、被告は、昭和六三年八月八日、右異議申立てを棄却する旨の決定をした。

2  本件処分の違法性

本件処分は、次に述べるとおり、違法である。

(一) 原告は、当初願書の指定国欄には、日本国が指定国であることを表示するチェックをしていないが、条約に基づく規則(以下「規則」という。)の第九一規則「書類中の明白な誤り」(以下単に「第九一規則」という。)に基づき、受理官庁に対し、当初願書の指定国の記載のうち朝鮮民主主義人民共和国の表示は日本国の表示の明白な誤りであるから、日本国の表示に訂正する旨の請求を行い、これに対して、受理官庁は、右訂正を許可したものである。この訂正の結果、日本国が指定国に含まれたにもかかわらず、本件処分は、この点の判断を誤っている。

(二) 第九一規則1(a)は、「国際出願又は出願人が提出した他の種類中の明白な誤りは、訂正することができる。」旨規定しているところ、受理官庁は、受理官庁から原告に返送された「返信用葉書」と本件国際出願を取り巻く社会的事情を基礎にして、当初願書の指定国欄の記載のうち朝鮮民主主義人民共和国の表示は日本国の表示の明白な誤りであると認め、原告の本件訂正を許可したものであって、この判断は公正である。このように、条約において権限を付与された受理官庁の判断がされている以上、被告は、明らかな法的根拠がない限り、右のとおり、明白な誤りとして取り扱うべきである。若しも、指定官庁が、受理官庁が許可した訂正の効力について、逐一その具体的妥当性を検査し直すならば、受理官庁に訂正の有効性について決定する権限を付与して手続きの統一を図るとともに、決定の結果を国際公開して各国国民に周知させることとしている条約の趣旨とするところが没却されることになる。

(三) 第九一規則1(g)及び(gの2)は、訂正の許可は、(1)受理官庁による許可にあっては、国際事務局に対する許可の通知が優先日から一七箇月を経過する前に国際事務局に到達する場合、また、(2)優先日から一七箇月を経過した後であっても、国際公開の技術的な準備が完了する前に許可の通知が国際事務局に到達する場合には効力を有する旨規定している。本件においては、優先日は一九八四年七月二三日であって、その一七箇月を経過した日は、一九八五年一二月二三日であり、また、本件国際出願が国際公開されたのは、一九八六年二月一三日であるところ、受理官庁から国際事務局に対する本件訂正の許可の通知が国際事務局に到達したのは、一九八六年三月四日であるから、本件訂正の許可は、形式的には、その効力要件を欠いていることになる。

しかしながら、本件出願の経過をみるならば、本件訂正の許可は、この要件を満たしているものとして扱わざるをえない。すなわち、原告は、一九八五年九月一三日、当初願書の指定国欄の記載のうち、朝鮮民主主義人民共和国の表示は日本国の表示の明白な誤りであるから、日本国の表示に訂正する旨の本件訂正の請求をし、これに対して、受理官庁は、同年一〇月三一日、本件訂正を許可しており、したがって、本件訂正の許可の時点では、優先日から一七箇月を経過するまでに約二箇月もの期間が残っていたのである。若しも、受理官庁が、本件訂正の許可と同時に、あるいは、遅くとも三、四週間後までにその通知を国際事務局に行っていたならば、右通知は、優先日から一七箇月を経過する前に国際事務局に到達していたことが明らかである。ところが、現実には、受理官庁は、許可から約四箇月が経過した一九八六年二月二七日になってようやく国際事務局に右許可の通知を発送したものであって、このような遅滞については、条約又は規則に何ら規定がないばかりでなく、第九一規則1(g)の趣旨からすると、むしろ、あってはならないことと解される。右のとおり、右の遅滞は、専ら、受理官庁の過誤又は怠慢によって生じたものであって、このことによる不利益を出願人である原告に負わせるのは、条理に反する。したがって、本件においては、形式的には、右のような期間に関する要件を欠いているが、法的取扱いにおいては、本件訂正の許可は、その要件を充足しているものとして扱われるべきである。

また、国際事務局は、受理官庁から本件訂正の許可の通知を受領した後、この訂正の許可を有効とするため、被告に対し、実施されるであろう条約二〇条に基づく送達を考慮するよう要請する旨を通知したり、訂正後の指定国名を記載した国際公開を行う等の諸手続を行っている。したがって、本件訂正の許可の通知について、期間に関する要件を充足したものとして取り扱うことによって生じる実質的な不都合は、ほとんど考えられない。

3  よって、本件処分の取消しを求める。

二  請求の原因に対する認否及び被告の主張

1  請求の原因1の事実は認める。

同2の主張は争う。

2  本件処分の適法性について

(一) 国際出願日の認められた後に、指定国を追加又は変更することは、条約上認められない。すなわち、条約に基づく国際出願をする際には、発明の保護が求められている一又は二以上の指定国を記載しなければならず、また、右指定国が記載されていない場合には、受理官庁は、その補充を命じなければならないのであり、補充のあった場合には、国際出願日は右補充のあった日になる。このように、国際出願の願書に指定国を記載することは、国際出願日を認定する際の要件ともなっているのであって、指定国の表示は、国際出願の願書の重要な記載事項の一つである。

また、条約一一条(1)の(i)から(iii)までに掲げる要件を満たし、かつ、国際出願日の認められた国際出願は、国際出願日から各指定国における正規の国内出願の効果を有するものとし、国際出願日は、各指定国における実際の出願日とみなされるのであるから、国際出願日の認められた後に、指定国を追加又は変更することは、右各規定の趣旨に抵触することとなるばかりでなく、新たに指定された国にあっては、他の出願との間で先願の地位等に関して紛争を生ずる可能性があり、条約上認められていない。

これを本件についてみると、本件国際出願の国際出願日における指定国は、オーストラリア、デンマーク、朝鮮民主主義人民共和国及び欧州特許条約の締結国であり、日本国は指定されていないから、本件国際出願を我が国の特許出願として取り扱うことはできず、本件書面を不受理とした本件処分は適法である。

(二) 受理官庁は、指定国の表示を朝鮮民主主義人民共和国から日本国に訂正することを許可しているが、指定国は、受理官庁と独立して、当該国際出願が条約又は規則に定める要件を満たしているか否かについて再審査することができるものと考えられる。また、訂正が認められるためには、国際出願人が出願当時意図した内容が訂正後の記載内容のとおりであり、それ以外の記載を意図したものでないことが何人においても直ちに認識可能な場合でなければならず、そして、出願人の右意思表示の内容をなすもののうち、条約又は規則上願書に記載することによって表示することが必要とされ、それ以外の表示方法を許さない事項については、原則として、願書の記載のみに基づいて意思表示の解釈が行われるべきである。

本件訂正の対象は、国際出願の指定国の記載であるが、指定国を指定する意思表示は、願書に指定国を記載することによって行うことが必要な要式行為であるから、原告が本件国際出願をした当時、指定国を日本国として意思表示を行っていたものであるか否かの解釈に当たっては、原則として、願書の記載のみに従って判断されるべきである。

そこで、本件国際出願の当初願書の記載をみると、当初願書の指定国欄には、日本国を表示した箇所にチェックはなく、朝鮮民主主義人民共和国を表示した箇所にチェックがされていることが明らかであり、また、当初願書のその他の記載をみても、右のチェックが誤りであり、日本国を指定国とする意思が明らかであるとみられる記載は全く存在しない。そうすると、当初願書上、原告が意図した指定国は、訂正対象国に限定してみれば、朝鮮民主主義人民共和国であって、日本国でないことが一義的に明確であるから、原告が当初願書に指定国として表示した朝鮮民主主義人民共和国を日本国に訂正したことは、表示の訂正の限度を超え、指定国の変更を行ったものであり、これは、第九一規則1(b)の要件に反するものであって、明白な誤りの訂正と解することはできない。

(三) 第九一規則1(e)に規定する訂正の許可が効力を有するためには、国際事務局に対する右許可の通知が、優先日から一七箇月を経過する前に国際事務局に到達するか、又は国際公開の技術的な準備が完了する前に国際事務局に到達しなければならない。右期間経過後に訂正されると、各指定国において種々の法律上の問題が発生することが考えられることから、これを避けるため、第九一規則1(f)及び(g)は、訂正の許可を与える関係当局の右のような義務を規定し、訂正を与える期間を明確に規定したものであって、理由のいかんを問わず、期間を徒過した訂正の許可の通知は、その効力を認めることはできない。

本件において、本件国際出願の優先日は、昭和五九年七月二三日であるから、それから一七箇月を経過した日は、昭和六〇年一二月二三日であり、また、本件国際出願が国際公開されたのは、昭和六一年二月一三日であるから、その前に訂正の許可の通知が国際事務局に到達しなければならないのに、本件訂正の許可の通知が国際事務局に到達したのは、右国際公開の後の同年三月四日である。したがって、本件訂正の場合、訂正の許可が効力を有するための要件を満たしていない。

第三証拠関係<省略>

理由

一  請求の原因1の事実は、当事者間に争いがなく、右争いのない事実によれば、本件国際出願においては、当初願書には指定国として日本国が表示されていなかったところ、原告は、指定国として日本国の表示に訂正する旨の本件訂正の請求を行い、これに対して、受理官庁は、本件訂正の許可をし、次いで、原告は、本件国際出願に基づいて、被告に対し、本件書面を提出したが、被告は、本件書面について、当初願書の指定国欄に日本国が指定されていないとの理由で本件処分をしたというのである。ところで、本件訂正の許可の効力の有無について当事者間に争いがあるので、以下この点について判断する。

指定国の訂正が許されるかどうかという点も一つの問題ではあるが、仮に指定国の訂正が許されるとしても、本件訂正の許可は、期間が遵守されなかったことにより、その効力要件を欠いているものと認められるから(本件訂正の許可が、形式的には、その効力要件を欠いていることは、原告もこれを認めるところである。)、まず、本件訂正の許可は、この点において既に効力を有しないものであるか否かについて検討することとする。この点に関する規則をみるに、第九一規則は、「(a) (b)から(gの4)までの規定に従うことを条件として、国際出願又は出願人が提出した他の書類中の明白な誤りは、訂正することができる。」、「(e) 訂正は、次の当局による明示の許可がない限り、行うことができない。(i) 誤りが願書にある場合にあっては、受理官庁」、「(g) (e)に規定する訂正の許可は、(gの2)、(gの3)及び(gの4)の規定に従うことを条件として、次の場合に効力を有する。(i) 訂正の許可を受理官庁・・・が行う場合においては、国際事務局に対する当該許可の通知が優先日から一七箇月を経過する前に国際事務局に到達する場合」、「(gの2) 優先日から一七箇月を経過した後であって国際公開の技術的な準備が完了する前に(g)(i)の規定に基づく通知が国際事務局に到達する場合・・・には、当該許可は効力を有するものとし、当該訂正は当該国際公開に含める。」と規定しているところであって、右規定によれば、本件訂正の許可のように受理官庁が行う訂正の許可は、国際事務局に対する当該許可の通知が優先日から一七箇月を経過する前に国際事務局に到達する場合には効力を有し、また、優先日から一七箇月を経過した後であっても、国際公開の技術的な準備が完了する前に国際事務局に対する当該許可の通知が国際事務局に到達する場合には、当該許可は効力を有するものとし、当該訂正は当該国際公開に含める、と定めるところである。そこで、右規定内容に照らして本件訂正の許可の効力の有無についてみるに、前示当事者間に争いのない事実によれば、本件訂正の許可の通知は、優先日から一七箇月を経過した後に国際事務局に到達したというのであり、また、国際事務局は、本件訂正の許可の通知が国際事務局に到達する前に本件国際出願の国際公開を行ったというのであって、本件訂正は右国際公開に含められていないことが明らかであり、したがって、本件訂正の許可は、第九一規則の規定上、その効力要件を欠くものであって、その効力を有しないものといわざるをえない。

また、条約及び規則は、本件訂正の許可の場合のように期間が遵守されなかった場合について、一定の条件が満たされたとき期間は遵守されたものとみなす規定及び遅滞を許す場合についての規定を設けているが(条約四八条、第八二規則)、本件訂正の許可の通知が右規定の適用を受けるものであるとの主張立証はない。したがって、本件訂正の許可は、右規定の適用によりその効力を有する、ということもできない。

なお、条約及び規則の各規定を通覧してみても、他に本件訂正の許可は効力を有するものと解すべきことを理由付けるような規定はなく、かえって、右各規定によれば、第九一規則「書類中の明白な誤り」の訂正の許可は、条約及び規則が適用される一連の手続の中の一つであって、その後には国際公開その他の手続が続いているのであるから、期間の遵守等をその効力要件とし、また、期間が遵守されなかった場合についても、一定の条件が満たされたときに限り期間は遵守されたものとみなす旨の規定等を設けているものと解されるところである。

以上によれば、本件訂正の許可は、その効力を認めるに由なく、本件訂正は行うことができないものであるから、本件国際出願は、日本国を指定国の一つとするものということができず、したがって、本件書面について、「客体なし。(注)国際出願日における願書の指定国欄に日本が指定されていない。」との理由でした本件処分は、適法であるというべきである。

二  原告は、本件訂正の許可は、形式的には、その効力要件を欠いているが、本件訂正の許可の時点では、優先日から一七箇月を経過するまでに約二箇月もの期間が残っていたのであり、若しも、受理官庁が、本件訂正の許可と同時に、あるいは、遅くとも三、四週間後までにその通知を国際事務局に行っていたならば、右通知は、優先日から一七箇月を経過する前に国際事務局に到達していたことが明らかであり、本件訂正の許可の通知の遅滞は、専ら、受理官庁の過誤又は怠慢によって生じたものであって、このことによる不利益を出願人である原告に負わせるのは、条理に反するから、法的取扱いにおいては、本件訂正の許可は、その要件を充足しているものとして扱われるべきである旨主張する。そこで、審案するに、前示当事者間に争いのない事実によれば、受理官庁は、一九八六年二月二七日、国際事務局に対し、本件訂正の許可の通知を発送し、同通知は、同年三月四日、国際事務局に到達したというのであるから、原告主張のように、受理官庁が、一九八五年一〇月三一日の本件訂正の許可と同時に、あるいは、遅くとも三、四週間後までにその通知を国際事務局に行っていたならば、右通知は、優先日から一七箇月を経過する前に国際事務局に到達していたであろうことは、十分考えられるところであり、また、本件訂正の許可の通知の遅滞は、原告主張のように、受理官庁の過誤又は怠慢によって生じたものである可能性も考えられなくもない。しかしながら、たとえ、右のとおりであるとしても、前示第九一規則の規定の趣旨に照らすと、本件訂正の許可は、その効力要件を欠き、その効力を有しないとすることが、条理に反するということもできない。したがって、原告の右主張は、採用することができない。

また、原告は、国際事務局は、本件訂正の許可を有効とするため、被告に対し、その主張するような通知をしたり、訂正後の指定国名を記載した国際公開を行う等の諸手続を行っているから、本件訂正の許可の通知について、期間に関する要件を充足したものとして取り扱うことによって生じる実質的な不都合は、ほとんど考えられない旨主張する。しかしながら、前示当事者間に争いのない事実によれば、国際事務局は、一九八六年三月二七日、本件国際出願について、指定国として日本国を含んだ願書を「訂正版」として国際公開したというのであるが、成立に争いのない甲第三及び第四号証によれば、右の「訂正版」は、条約二一条に規定する国際出願の国際公開ではなく、したがってまた、前示第九一規則1(gの2)にいう国際公開でもなく、かえって、前示当事者間に争いのない事実によれば、国際事務局は、受理官庁が国際事務局に対して本件訂正の許可の通知を発送する前である一九八六年二月一三日、本件国際出願について、条約二一条に規定する国際公開を行ったというのであって、その国際公開においては、その内容(第四八規則2)の一つである指定国に日本国は含まれていなかったのであるから、国際公開の効果(条約二九条)一つを考えてみても、たとえ、右のような「訂正版」がその後に発行されたりしたからといって、実質的な不都合がないとは認めることができず、したがって、原告の右主張も、採用の限りでない。

三  以上のとおりであるから、原告の本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく、理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法七条及び民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 清永利亮 一宮和夫 若林辰繁)

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